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生成AIと内製化が突き付ける現実、揺らぐ「デザイン業」のビジネスモデル

2026年上半期、負債1,000万円以上の「デザイン業」の倒産が40件に達し、前年同期比でおよそ1.7倍に増えたようです。

上半期の件数が40件を超えるのは2012年以来14年ぶりとなるようで、その大半を従業員5人未満の小規模事業者が占めており、背景には、生成AIやデザインソフトの普及による顧客企業の内製化、紙媒体からデジタル広告への移行、住宅関連企業の倒産増加という複数の構造変化が重なっているようですね。

デザイン方向

デザイン業の倒産が14年ぶり高水準、小規模事業者に集中

2026年上半期、「デザイン業」で倒産した企業は40件、負債額はいずれも1,000万円以上で、この件数は前年同期比166.6%増にあたり、上半期の倒産件数が40件を超えたのは2012年以来で、およそ14年ぶりの高水準となり、負債規模で見ると、1,000万円以上5,000万円未満の倒産が30件と大半を占め、従業員数では5人未満の企業が36件に達しており、少人数で運営するデザイン事務所や制作会社への負担が特に大きくなっていることがうかがえます。

このペースが年間を通じて続いた場合、2026年の倒産件数は80件程度に達する計算となり、さらに増加した場合、年間80件だった2011年の水準を上回る可能性も指摘されています。

倒産の絶対数だけを見れば他産業と比べて小さく見えるかもしれないのですが、少数精鋭で成り立つ業種であることを踏まえると、動きの速さそのものがリスクの大きさにつながります。

生成AIとデザインソフト普及がもたらす「内製化」の圧力

倒産増加の要因として、まず指摘されているのが顧客企業側の「内製化」の進展で、生成AIや高機能なデザインソフトが普及したことで、企業が自社内で一部のデザイン業務をこなせる場面が増えており、例えば、広告バナーや簡易なチラシ、SNS投稿用の画像、プレゼン資料のレイアウトなど、これまで外部のデザイン会社に依頼していた領域の一部は、テンプレートやAI画像生成ツールを使えば短時間で形にできるようになっています。

ツール利用料はかかるものの、単価の低い案件を継続的に外注するより、内製化した方がコストを抑えられるケースは多く、東京商工リサーチは、こうしたツールの普及が「低コストかつ短時間での内製化」を後押しし、外部のデザイン会社に回っていた仕事の一部が吸収されているとみています。

特に、小規模な制作会社が担ってきた単発案件や、継続だが単価の低い仕事ほど、内製化の影響を受けやすく、今後もさらに厳しい状況になっていきそう。

一方で、生成AIによる制作物には、権利関係や利用条件の確認が欠かせないのですが、生成物の著作権や商用利用可否など、法的・契約的なリスクを整理しながらクライアントを支援できるデザイン会社は、今後相対的な存在感を増す可能性があると分析されていて、単に「安く・早くつくる」ことだけではなく、権利やブランド戦略を含めた伴走ができるかどうかが、差別化の軸になりつつあります。

紙からデジタル広告へ、収益構造の変化が直撃

倒産の背景として2つ目に挙げられているのが、広告メディアの変化で、雑誌やカタログなど紙媒体を主力としてきたデザイン会社は、デジタル広告への移行によって受注減に直面しています。

広告予算の配分はここ数年で大きく変わり、オンライン広告やSNS運用、動画コンテンツ制作などデジタル寄りの領域へとシフトしており、これに合わせて、必要とされるスキルセットも、紙面レイアウト中心のグラフィックから、WebデザインやUI/UX、動画編集、マーケティングデータの読み解きなどへ広がっています。

紙媒体に特化してきた企業が、こうした変化に合わせてサービス内容や人材を切り替えるには時間と投資が必要で、デジタル分野に強い人材の採用や育成にはコストがかかる一方、既存の紙媒体案件は縮小していき、その狭間で売上が細り、資金繰りが悪化すれば、小規模事業者ほど耐えられなくなっていきます。

紙からデジタルへのシフト自体は今に始まったことではないが、生成AIの普及と重なったことで、「デジタルに強い企業が単価の高い案件を取り、定型的な制作はツールと内製で済ませる」という構図がいっそう明確になりつつある。

住宅関連の倒産増が、インテリア・空間デザインにも波及

3つ目の要因として、ハウスメーカーなど木造建築工事業者の倒産増加が挙げられ、住宅や店舗の新築・リフォームが減速し、建築関連企業の経営が悪化すれば、その周辺で仕事を受けてきたインテリアデザインや空間デザインの企業にも影響が及び、内装や家具のデザイン、モデルルームのコーディネート、店舗のサイン計画など、建築や不動産と密接に結びついたデザイン業務は、元請けとなる住宅関連企業の業績に左右されやすく、案件自体が減るだけでなく、単価の見直しや支払いサイトの長期化など、資金繰りを圧迫する要因が重なることもあります。

木造建築工事業者の倒産が増えている状況では、新規開発や大型リフォームの計画が見直され、インテリアや空間デザインの予算が削られるケースも想定され、デザイン業の倒産増加は、単に「デザインの価値が下がった」だけではなく、住宅・建築市場の変動が下流に波及した結果としても捉えられます。

これからのデザイン会社に求められる「独自性」とリスク対応

今後について「独自性を打ち出せない企業は価格競争で劣勢となり、淘汰が続く」とされ、ここでいう独自性は、単純に作風が個性的かどうかだけではなく、ビジネスとして何を提供できるかという観点が含まれます。

一つは、生成AIやテンプレートでは代替しづらい上流工程や専門性の強化で、ブランド戦略やコミュニケーション設計、ユーザー体験の設計、複数メディアをまたいだ一貫性のあるビジュアル開発など、単発の制作物にとどまらない領域では、依然として専門家としての関与が求められ、もう一つは、生成物の権利確認やコンプライアンス対応で、AIを活用した制作の現場が広がるなかで、著作権や商標、肖像権などのリスクを整理し、クライアントとともに運用ルールを設計できるデザイン会社は、単なる「外注先」以上のパートナーとして評価されやすくなります。

他方で、ツールによる内製化が進む領域では、請負単価の引き下げ圧力が高まりやすく、価格だけで競争するビジネスモデルは、生成AIの進化とともに一段と厳しくなる可能性があり、小規模事業者ほど、どの領域で価値を発揮し、どの領域ではツールやパートナーと組むのかを早い段階で見極めることが、持続的な経営に直結してくる。

2026年上半期の数字は、デザイン業の構造変化が一層進んだ結果として表面化したものだと言え、今後の倒産件数の推移を注視しつつ、自社のポジションや強みをどこに置くのかを、現実的な前提に立って見直すことが求められています。

税金・社保滞納倒産が10年ぶり最多 小さな会社から静かに増える破綻リスク

税金滞納」倒産が10年で最多。

東京商工リサーチの集計によると、2026年1〜6月に発生した「税金滞納(社会保険を含む)」を伴う倒産は126件となり、前年同期から53.6%増と急増、上半期として100件を超えたのは、2017年以降の10年間で初めてとなるのだそうです。

税金滞納倒産

負債総額は、169億7,700万円で前年同期よりは減っているとはいえ、金額ベースでは小ぶりな案件が中心とはえ、件数は確実に増えており、最大の倒産は千葉県のトモサービス(破産)で負債は13億5,400万円。

負債5億円以上の事例は6件にとどまる一方、5,000万円未満が44件を占め、小規模な破綻が目立っていて、税金や社会保険料をきちんと納められなくなった会社が、小さな規模から増えてきています。

小さな会社ほど追い込まれる構図

「税金滞納」倒産を資本金別でみると、1,000万円未満の企業が75件と全体の約6割を占め、事業規模が小さいほど、資本のクッションが薄く、税金や社会保険料の支払い遅れが倒産に直結しやすい状態にあります。

業種別では、飲食店を含むサービス業他が43件(構成比34.1%)、建設業が24件(同19.0%)と、この2分野だけで全体の半数を超え、サービス業や飲食は原材料費や人件費の影響を直接受けやすく、建設業は資材費の高騰や受注価格とのギャップに悩まされています。

従業員として働く立場から見ると、「人手不足なのに会社の台所事情は厳しい」という感覚に近く、取引先企業との関係でも、表面上は普通に見えても、裏側では資本金や負債規模が小さな会社ほど行き詰まりやすい構造がにじんでいます。

企業の収益環境を圧迫している要因として、円安による物価高、金利の上昇、中東情勢の悪化などがあり、輸入に依存する資材や食材の価格が上がり続ける一方で、借入金の利息負担も重くなりやすく、加えて、賃上げの動きが広がったことで、企業側の社会保険料負担も増加しています。

こうしたコスト増を販売価格に十分転嫁できていない企業ほど、手元資金が薄くなり、優先順位の低い支払いから遅れ始めています。

税金や社会保険料の納付に苦しむ企業が増えている背景には、「値上げをしづらい」「顧客離れが怖い」といった心理もあり、家計側から見れば、賃上げや物価高のニュースの裏で、雇用を支える企業がどこまで持ちこたえられるのか、という問題が静かに進行しています。

滞納はなぜ「再生の壁」になるのか 

税金や社会保険料の滞納は、単に支払いが遅れているだけの問題だけではなく、金融機関や取引先が与信を判断する際、滞納の有無は重要なシグナルとして見られ、東京商工リサーチも滞納に関する取引照会が依然多いと指摘しています。

滞納が表面化すると、新たな融資が受けにくくなり、取引条件が厳しくなるなど、事業再生のために必要な選択肢が狭まり、調査では、こうした状況が事業継続を阻む「高い障壁」となっていることを示しています。

企業側には事業の見直しや収益改善に向けた自助努力が求められる一方、関係機関には、事業を継続させながら徴収する体制への見直しも課題として浮かんできており、働く人や取引先の立場から見れば、「支払えないから即退場」ではなく、再生の道筋をどう確保するかが自分の生活やビジネスにも直結してくる。

倒産件数、年1万件超す見通し

帝国データバンク東京商工リサーチが発表した11月の倒産件数は、帝国バンクが前年同月比4.6%減の796件、東京商工リサーチが同7.5%減の778件となり、東京商工リサーチによれば700件台は9カ月ぶりで、2025年では2番目の低い水準となるようですが、帝国データバンクによれば、、1月から11月の累計は9380件と前年同期を327件(3.6%)も上回っており、12年ぶりに年間で1万件を超す見通しとなっています。

倒産

11月の負債総額は帝国データバンクが788億8300万円(前年同月比48.2%減)と大幅に減少し、3カ月連続で前年を下回った一方、東京商工リサーチの調査による負債総額は824億300万円(同48.6%減)で、こちらも3カ月連続で前年を下回っており、負債が半減した背景について、東京商工リサーチは、前年は100億円以上の倒産が日本電解など2件あったことを指摘しており、25年は最大の倒産が中央建設の53億8100万円と中堅規模の倒産が減り、小規模倒産が目立っているようです。

今後について、東京商工リサーチは、抜本的な経営改善が遅れた企業を中心に「資金調達が難しい小・零細企業が押し上げる形で、年間1万件の壁を超えていく」との見方を示しています。